

“文から受ける違和感”の原因
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「文頭と文末の関係が不自然」あるいは「必要な語もれているのでは」と違和感を覚える文があります。論理・内容上の誤りではなくとも、読者の許容範囲を越えた不自然な文構造は読解を妨げ、ひいては社会効率の低下につながるとも言えます。
[注] 本コーナーでは技術文を対象に文構造を見直すいくつかのポイントを解説しますが、実務に応用する際は対象となる技術文書の目的(報告文書、マニュアル、仕様書など)
を考慮する必要があります。
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主語と述語の関係から生ずる違和感の解明
読んで違和感を感じる文の代表が、“主語と述語が対応しない”文と言えます。「読者が主語ととらえた語」が同様に「読者が述語ととらえた語」と結びつかないと、違和感の原因になります。

[当社出張開催形式セミナー「わかりやすい技術文書の作成手法−試験報告・調査報告編−」から抜粋]
「執筆者にとっての主語」と「読者が主語ととらえる語」の“ずれ”
「主語と述語が対応しない」と読者が感じる原因の一つに、「文の本来の主語」と「読者が主語ととらえる語」の“ずれ”があります。執筆者が文を表す際、文頭の「**は」に対応した述語を示さず(言い換えれば「**は」が“解決”しない)別の主語と述語で文を構成すると、この“ずれ”が生じます。
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執筆者には、表そうとする文の「中心事項(主題・対象)」に“とりあえず”係助詞「は」あるいは格助詞「が」を付けて書き始めようとする傾向があります。
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対して、読者は文頭の「**は」あるいは「**が」を主語ととらえ、主語に対応した述語を“期待”して読み進めます。「**は」が文の主語であり、この「**は」に対応した述語で結ばれていれば、読者には何も違和感が残らないはずです。
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ところが、執筆者が取り上げた「**は」が文の中心事項であっても文の主語でなく、続く他の語を主語にした(あるいは主語を省略した)場合、読者が主語ととらえた文頭の「**は」と文末の述語が対応せず違和感を覚える原因になってしまいます。

[当社出張開催形式セミナー「わかりやすい技術文書の作成手法−試験報告・調査報告編−」から抜粋]
「主語の省略」と「主語が曖昧」の違い
“「**は」と書き始め、書き進めるうちに別の語を主語にして文を構成してしまう”傾向は、「日本語は主語が“曖昧”だから主語を大切に」を“真に受けた反動”とも言えます。「主語を大切に」を誤解して取りあえず「**は」で文を書き始めたものの、文の途中で執筆者自身が「主語の位置付けを曖昧に」してしまうと前述の結果につながります。
「日本語は主語が曖昧」は“俗説”であり“本質論のすり替え”にすぎません。日本語では、文書あるいは段落で「主となる視点(人称に相当)」を統一し、これが主語となる場合は省略するのが一般的です。言い換えれば、日本語を用いる私たちは枠組みを決めたうえで共通項を省略しているのです。
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