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事物の動作(あるいは作用)を表す際に「事物を主語にした他動詞文」が多用されている例を見かけますが,「本来は動作の主体にならない語を主語にした他動詞文」あるいは「慣用的な表現以上に事物の主語に行為の述語を結びつけた文」に陥っている場合があります. |
「動作の主体になる事物」ではなく「動作にかかわる名称(例:機能名)」を主語にして動作の述語と結びつけた他動詞文を用いると,英文直訳風に読めてしまう場合があります.また,読者の視点で表された文体との不統一が生じやすくなります.
『例:**コマンドは,***をロードする』(英文直訳風)⇔加えて『**コマンドを実行すると,***がロードされる』との不統一
『例:**機能は,***を実行する』(英文直訳風)⇔加えて『***システムは,***を実行する』との不統一
英文直訳風と評しましたが,一部の技術文書(専門技術者を対象として機能仕様書あるいはリファレンスマニュアルなど)で用いられる文体であり,誤りと主張するつもりはありません.また,「動作の主体とは」を基本原理にさかのぼって議論するつもりもありません.ただ,文体の不統一は避けるべきですし,前節で述べたように 英語の構造をそのまま日本語に当てはめるのは無理があると言えます.
「本来,動作(あるいは作用)の主体となる語」を主語にして,主語に対応した述語で結んだ他動詞文ならば何の不自然もありません(例:薬剤の作用を表す際の「***剤は,***を抑制する」など).
まれに「英訳しやすいように,日本語の文書でも事物を主語にした他動詞文を多用している」という主張を聞きますが,英訳のために日本語を“ゆがめる”のは本末転倒と 言えます.
日本語にも「事物の主語」 に「行為の述語」を結びつた文を用いる習慣がありますが,前述のように「技術文書では行為と動作は混用を避けるべき」の視点から十分に定着した慣用表現にとどめるのが適当です. また,「事物の主語に行為の述語を結びつけた」文は“理にかなわない”ばかりか擬人的あるいは英文直訳風にも読みとれてしまいます.
文学では,形容的あるいは感情を事物に託して「事物が行為する」と表される場合もあります.『例:空が泣き出した(⇔雨が降り始めた) 』
また,製品カタログの一部 で「事物が行為する」とされても,もさほど違和感はありません.『例:本製品は,・・・の効率化を提供します』
あるいは,「法人」である会社を主語にした他動詞文が一部に用いられる場合もあります.『例:「当社は,・・・の責任を負いかねます』
ただし,上記の例を技術解説あるいは技術報告に多用すると,“技術文書にふさわしくない”印象を与えかねません.
きわめて先端的なロボットの動作を「○○ロボットが,・・を考えて行動する」と表している例もありますが,限定例な例ととらえるべきと思います.
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