
技術文書でよく用いる動詞は「活用語尾を送り仮名にする」という原則に基づけば解決します. 慣例がいくつもあるため迷う場合がありますが,迷ったら原則に戻るのが基本です.
掲載した事例に関する付帯事項足
当セクションで取り上げた用例は,技術文書をはじめとする実用文書でよく使われる表現からの抜粋です.
当セクションで取り上げた用法は,「送り仮名の付け方」(平成3年 内閣訓令第二号)に基づいています.「送り仮名の付け方」(平成3年 内閣訓令第二号)で許容されている表記(どちらの表記を使ってもよいもの)の場合は ,複数をそのまま掲載するあるいは各種の出版物の傾向および慣用例を勘案して筆者が判断しています.
不統一になりやすいのは,「行う」あるいは「行なう」のいずれも誤りではないからです.誤りでないがゆえに,かえって統一への意識が向かないとも言えます.
先の「送り仮名の付け方」(平成3年 内閣訓令第2号)では,動詞を中心とした「活用のある語」に関して「活用語尾の前から送る」,「送り仮名の一部を省く」という慣用が許容されたり例外として認められています.
同じ文書で「行う」と「行なう」が混在している例を見かけます.両方がワープロの漢字変換にあるため執筆者がなにげなく使ったのかあるいは執筆者が交代したのかもしれません.
いずれにしても,誤りではなくとも不体裁であり技術文書を含む実務文書では避けなければなりません.執筆者は漢字に変換する際に意識して統一する必要がありますし,企業内でも統一しなければなりません.
文書を作成する際に迷ったならば,送り仮名の「活用語尾を送る」に沿って判断すれば統一できます.
「おこなう」は「おこなう」,「おこなえば」ですから,「おこな」が語幹です.「活用語尾を送る」の主旨からすれば,「行う」と表記するのが適当です.「行なう(活用語尾の前から送る)」とするのは個人の文書の範囲にとどめるのが適当かもしれません.
補足しておきたいのは,一部の形容詞では例外が定着している場合があります.定着した例外に原則をとおそうとすると,かえって無理を生じます.
「著しい」は「いちじるしい」,「いちじるしく」ですから,「いちじるし」が語幹となります.ところが誰しも「し」を送り仮名の一部にします.これは,語幹が「し」で終わる形容詞の例外です.「著しい」に関しては学校で教育されるため誰もが意識せず「著しい」と表しますし,漢字変換 でも「著しい」はあるが「著い」がないワープロソフトもあります.
「活用語尾の前から送る慣用」がある動詞も,原則のとおり活用語尾から送る(「表わす」とせず「表す」と表記)のが適当です.
用字用語集などから勘案して勧める表記 |
用字用語集などから勘案して勧めない表記 |
備 考 |
表す | 表わす | 活用語尾の前から送る慣用もあるが,原則として活用語尾から送る |
著す | 著わす |
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現れる | 現われる |
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行う | 行なう |
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断る | 断わる |
「送り仮名の一部を省く慣用」がある動詞も,原則のとおり活用語尾から送る(「終る」とせず「終わる」と表記)のが適当です.
用字用語集などから勘案して勧める表記 |
用字用語集などから勘案して勧めない表記 |
備 考 |
押さえる | 押える | 送り仮名の一部を省く慣用もあるが,原則として省かない |
積もる | 積る |
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聞こえる | 聞える |
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起こる | 起る |
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落とす | 落す |
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当たる | 当る |
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終わる | 終る |
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合わす,合わせる | 合す,合せる |
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果たす | 果す |
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送り仮名の付け方(昭和48年6月18日,昭和56年10月1日 一部改正)内閣告示・内閣訓令 野村雅昭 編:「東京堂 用字用語辞典」,東京堂出版,1981 当ページの表を作成するにあたり用語選択の参考にさせていただくとともに用例の一部を引用させていただきました. |
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